劔岳は雨のアタック

2015・ 8/29~31
剱岳 (北アルプス)
グループ山行報告
参加者9名
(SHCメンバー4名 & 加藤ガイド+他4名)
コース
29日 島田(3:00)ー立山ケーブルカー駅(9:40)ー美女平駅(10:20)ー室堂(11:15)…剣御前小舎(14:05)…剣山荘(15:30)泊
30日 剣山荘(7: 15 )…前剱(8:35)…剱岳山頂(11:50~12:10)…(14:10)…剣山荘戻り(16:00)泊
31日 剣山荘(6:45)…剣御前小舎(8:20)…室堂(10:45)ー美女平駅(11:50)ー立山ケーブルカー駅(12:30)ー島田(20:30)
劔岳は雨のアタック
霧雨が降る中「剱岳」を目指し、宿舎「剣山荘」を後にする。「剣山荘」から尾根に延びる緩やかな道を「一服剱」まで行く。順調な滑り出しである。「前剱岳」の手前辺りから傾斜が増し厳しくなる。霧で視界がきかず時々顔を上げては先を確認する。霧の中から一人、また一人、登山者が降りてくる。計4人と出会った。尋ねると「剱岳山頂まで行ってきた」との返事に驚く。尾根筋に出ると風の当たりが強くなり油断すると身体があおられる。「前剱岳」を通過し「前剣の門」の表示がある。垂直の岩壁を真横にトラバースする危険箇所である。ここから何人もの人が滑落している。心臓がドキドキ波打ち身体が硬直していくのが分かる。道幅は30~40㎝か?左側の岩に身体を寄せる。ぎこちなく足を交互に出す。足下からふわーとガスが吹き上げてくる。濃いガスに覆われて下は何にも見えないが奈落の底だ。おゃ?前方岩壁にピカピカに光った真新しい鎖が付いているではないか!ここには鎖がないと書かれていたのに。助かった!天の救いだ!急いでカラビナをかける。ガチガチに固まっていた身体に少し余裕ができた。カラビナを左手で前に押しながら少しずつ進む。カーブになった壁の向こう側にたどり着く。間発入れず50mの斜面を下る鎖場が現れる。傾斜がきつく「ぞっ」とする。しかし「豊橋・立岩」で事前の岩トレをしたせいか比較的スムーズにクリアーできる。
ほっとしたのも束の間、黒くゴツゴツ光った岩の壁が行く手を塞ぐ。顔を真上にしてみても7~8m位先の突き出た所までしか見えずその先が見えない。ここがカニのタテバイだ。ガイドの加藤氏がすぐさまロープを出し、隆君に「岩壁の中間地点でロープビレーする女性陣のフォローを頼む」と指示して岩壁をスイスイと登っていく。頭上での姿は見えないが「ロープ投げるよ」の声に「オーライ」と大きく返事すると、すぐさま真上からロープが降ってきた。女性陣の身体にサブガイドの松本氏がロープを結ぶ。最初の右足一歩をかける鉄杭の位置が高い所にあり、決められず難儀している。右の足、次の左足、岩に打ち付けられた杭に慎重に足を置き、少し登ってはカラビナをつけかえる。冷たい雨が容赦なく降りつける。少し時間がかかったけれど、全員がタテバイを通過。するとあっという間に「剱岳山頂」に到着。雨と霧でかすんで何にも見えない「剱岳」に10人全員が立った。皆感激で目が潤んでいる。握手を交わし万歳をし写真を取り、あっという間に山頂滞在が過ぎる。体の冷えもあり早々帰路につく。下りもカニのヨコバイ、垂直ハシゴ、登下降の鎖場ありで緊張の連続であったが無事「剣山荘に」到着した。
滑落事故発生
「前剱山頂」をトラバースし尾根に出る。先ほど我々を抜いて行った6人の東京パーティ(男1人女5人)が何故か後ろからやって来る。道を間違えたのかな?再度道を譲る。先頭を行く女性が、左にコースを取らなければならないのに岩を乗り越え真っ直ぐに行こうとしている。「そっちじゃないよー」と叫び引き返らせた。その時誰かが「下の方に水色のテントが見える」と言う。こんな急斜面でテントは張れない。シュラフカバーである。動かないから「休憩をしているだろう」と答えた。東京パーティの男性が見えない。5人の女性仲間を置いてどこへ行ったんだ?その東京のパーティと一緒に隊を成し下っていくと下の方に水色のシュラフカバーが見える。いや、よく見るとシュラフカバーではない!かっぱを着た人だ!人が倒れている。すぐさま加藤ガイドが女性陣に「倒れている人を見ないで先に降りて行くよう」指示をする。倒れている人はこの東京パーティの男性であった。加藤氏が近づいて「大丈夫ですか?」と声をかる。「足と手が動かない!骨折している」との返事。加藤氏の問いかけにしっかり答えるから意識はしっかりしている。すぐに加藤氏が携帯電話で救助の連絡を取る。滑落場所・名前を告げる。全員が動揺している。彼女たちの目が「此処にいて」と懇願しているようで去り難いが、ここは加藤氏と松本氏に任せて下ることにした。間もなくして急斜面を猛スピードで駆け下りてくる人がいる!救助隊だ。救助要請して1時間も経っていないのに。良かった! 我々が「剣山荘」に戻ったのは夕方4時。それから2時間後の6時すぎ、東京パーティ女性5人が小屋に来た。「良かったね、早く小屋に入れて」と出迎えた。「おかげでありがとうございました」あとは声にならず大粒の涙を流す。夜7時。滑落したガイドが12~3人の救助隊の手で小屋に運ばれてきた。一夜明けた翌朝、天候が良ければ山岳ヘリで搬送されるのだが、「セイノ・ヨイショ」の掛け声とともに登山道を立山室堂まで運ばれた。
加藤ガイドの話 … 前剣の下りでの事故はガイドの転倒事故でしたが、少しの気の緩みがベテランをも、事故に陥れる怖さを感じました。相手は6人パーティでツエルト1張りのみだったので、こちらのツエルトやタープで雨よけを作り、応急対応を手伝いました。その後下って行く途中の武蔵のコルで、剱沢から来た山岳救助隊数名とすれ違い、対応の早さに驚かされました。雨天行動では雨具からの濡れで低体温症になる恐れがあり、防寒着や濡れても冷たくないウール系の下着の必要性を実感しました。また靴の濡れも体温低下につながるでしょう。あと5度気温が低かったら危険だと感じました。【浩】

天候に恵まれなかったが、山頂には全員立つことができた。ガイド二人を頼んでの剣岳は、安心感と心強さで急傾斜、カニのヨコバイ、タテバイも登れたと思う。岩場トレーニングを事前にやっておいた事も役立った。【鈴子】
雨の中、登頂への期待と不安を胸に剣山荘を出発。濡れた岩はほとんどすべらなかったし、鎖場の鎖は今まで見た中で一番頑丈だった。緊張感はあったが、岩場の渋滞もなく、自分達のペースで進めた。山頂は真っ白で眺望ゼロだったが祠をみつけた時は感動だった。【仁枝】
会報やまびこNo222(10月号)グループ山行報告・転載
SHC広報
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